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「ヘンゼルとグレーテル」といえば、子供の頃に絵本で読んだとき、美味しそうなお菓子のおうちが印象的でした。
 
 
この話は「グリム童話」に収められているので、日本でもとてもよく知られています。
 
 
グリム童話は創作ではなく、もともと主に西欧に伝わる民話・伝承をドイツのグリム兄弟(兄ヤーコブと弟ヴィルヘルム)が集めたものです。
 
 
グリムは童話集を初版から第七版まで改変して発刊しています。児童向けということで、残酷・性的な描写がどんどんけずられ、どんどんマイルドな内容に変わっていきました。
 
 
まずは、「ヘンゼルとグレーテル」の改訂版のあらすじをご紹介します。

 
 

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「ヘンゼルとグレーテル」のあらすじ

 

 
「ヘンゼルとグレーテル」は、もともとドイツのヘッセン州に伝わる中世の民話でした。恐ろしい森の雰囲気が「赤ずきん」と似ています。
 
 
この民話が世に広く知られるようになったのは、1812年にグリム兄弟の童話集の中で発表されたからです。
 
 
貧しい中世社会の中で、口減らしのため子供を捨てるというなんともシュールな内容なのですが、今はうまく子供向けの話に転換されています。

 
 

■両親が子供を森に置き去りに?

 

 
むかしある森のはずれに、貧乏な木こりの家族が暮らしていました。父と母、2人の子供の4人家族です。兄の名前はヘンゼル、妹の名前はグレーテルといいました。2人の母親は亡くなってしまい、父親は新しい妻を迎えたため、2人にとって継母でした。
 
 
家はたいへん貧しくて、その日の食べ物も底をつき、空腹のため眠れない日々が続きました。
 
 
ある日、妻(継母)が夫にささやきました。
 
 
「ねえ、あんた、このままではみんな飢え死にしてしまうよ。役にたたない子供たちを手放すほかないんじゃない?」
 
 
口減らしのために子供2人を森に捨てるようという提案でした。夫はためらいましたが、妻はさらに言いました。
 
 
「どうせこのままでは4人とも飢え死にするしかないのよ。子供を森の中に置き去りにして、その運命を神様におまかせするのよ。」
 
 
夫は妻の言うことももっともだと思い、したがうことにしました。
 
 
「わかった、明日、子供たちを森の中に置きにいこう。」
 
 
なんともひどい話ですが、当時の社会は餓死寸前の貧しい人々がたくさんいて、子供を捨てたりわずかばかりのお金で売ったりすることもありがちでした。

 
 

■小石を目印に家に戻る2人

 

 
その夜の夫婦の会話をヘンゼルとグレーテルは聞いていました。悲しみにくれて泣くグレーテルをなだめながら、兄のヘンゼルはあることを思いついて、朝早くに小石を集めました。
 
 
う両親に森の奥へ連れて行かれる道すがら、ヘンゼルは集めた石を落としながら進みました。そのまま置き去りにされてしまいますが、彼が落としたのは夜になると光る石。その明かりを頼りに、家に帰ることができました。

 
 

■今度はパンを目印に・・・

 

 
2人の姿を見て両親はどうしたでしょう?
 
 
父親は子供たちの元気な姿を見て思わず喜んで迎え入れました。でも、貧しい暮らしはまったく変わりません。結局、もう一度子供たちを森に捨ててしまうことにしたのです。
 
 
しかも、もうヘンゼルが小石を集められないように、家のドアに鍵をかけてしまいました。
 
 
仕方なくヘンゼルは小石の代わりになるものを考えました。夕食に出された「パン」をこっそりポケットの中にかくしたのです。
 
 
そうして、また森の奥へと連れて行かれる道中、そのパンを細かくちぎって落としました。
 
 
でも、パンくずは森の鳥たちに食べられてしまって、ヘンゼルとグレーテルはとうとう家に帰れなくなってしまったのです

 
 

■森の奥のお菓子のお家

 

 
困ってしまったヘンゼルとグレーテルは森の中をさまよい歩きました。と、そのとき、お菓子でできたお家を見つけたのです。
 
 
お腹がぺこぺこだった2人は、夢中でお家(お菓子)にかじりつきました。すると、家の中から1人の年老いたおばあさんが出てきました。おばあさんはやさしく2人を家に招き入れてくれ、食事や寝床も与えてくれました。
 
 
2人は大喜びでしたが、それもつかの間、次の朝、おばあさんはヘンゼルを小屋に閉じ込めてしまい、グレーテルに「お前の兄さんを太らせて食べるのだから、お前はその食事をお作り!」と命じたのです。
 
 
そう、やさしいと思ったおばあさんは、実は怖ろしい魔女だったのです。

 
 

■魔女との対決

 

 
それから幾日も経ちました、魔女は目が悪かったので、毎日ヘンゼルの指を触って太り具合を確認していましたが、まったく太る気配がありません。
 
 
賢いヘンゼルは、指ではなく食事の際に残った「骨」を差し出していたのです。魔女はとうとう待ちきれずもう食べてしまおうと考えました。
 
 
そうして今度はグレーテルに「お前の兄さんを煮るから鍋を用意おし!」と命じました。
 
 
魔女はグレーテルにかまどの火の温度を見ろと言いました。グレーテルは「やり方がわからないのでお手本を見せて」と答えました。そして、魔女が手本を見せるためにかまどに近寄り頭を突っ込んだそのとき、力をふりしぼって、熱したかまどの中に魔女を突き飛ばして閉じ込めてたのです。
 
 
「ギャーーーッ!」と、呪いの声を上げながら魔女は焼け死にました。
 
 
グレーテルはヘンゼルを助け出すことに成功したのです。魔女の家の中には、たくさんの財宝がありました。2人はこれを持って帰ったらもう捨てられる事はないと思い、喜んで家に帰りました。
 
 
家に着くと、2人をうとんじていた継母はすでに病気で亡くなっていました。父親は2人を置き去りにしたことを悔いていて、無事に帰ってくれてよかったと喜びました。
 
 
そうして、ヘンゼルとグレーテルは、父親と3人で幸せに暮らしましたとさ。

 
 

グリムにありがちな「初版」との違いを解説

 

 
現代日本人の感覚では、この話でも相当ツッコミどころがありますが、初版はもっと世知辛い内容となっております。
 
 
改訂版と「初版」との大きく異なる点をさらりとお伝えします。
 
 

■継母でなく実母だった

 
 
童話として伝わる改訂版では、ヘンゼルとグレーテルを森に捨てようと父親をそそのかしたのは、継母(ままはは)でした。
 
 
でも、初版では実母となっています。
 
 
「白雪姫」と同じパターンですね。母が実の子にひどいことをするというのは、母が子に読み聞かせる童話としてふさわしくないと思われるのは当然です。それで、第四版から継母に変えられました。

 
 

■グレーテルは魔女に母を重ねていた

 
 
自分と兄を救うため、魔女をかまどに閉じ込め焼き殺したグレーテル。
 
 
小さい女の子が、かなりすごいことを思いついてやってのけましたね。
 
 
このとき「初版」では、魔女の顔に自分たちを捨てた実母の顔が重なったというグレーテルの心情描写が書かれているのです。
 
 
母に対する強い恨みが魔女への恨みと重なって、あの残酷な行動につながったのがはっきり分かるように描かれています。
 
 
小さな女の子に芽生えた強い恨みの感情・・・
 
 
理解できますが、やはり童話としてはふさわしくないと思われますね。

 
 

■2人が帰ると母は行方不明になっていた

 
 
最後にヘンゼルとグレーテルが家に帰ったとき、改訂版では「継母は病死」していましたが、「初版」では「母はいなくなっていた」とされています。
 
 
どこへ行ったとは描かれていない、行方不明です。
 
 
「魔女の顔が母の顔に重なった」というグレーテルの心情を振り返ると、実はそういうことだったのか!とかなり怖いです。
 
 
初版のほうがもやっとしたものが残るいい終わり方のような気がします。ゾワゾワするけど。

 
 

おわりに

 

 
グリム童話は、中世から近世にかけてのヨーロッパの昔話が元になっています。
 
 
物語の中から、中世ヨーロッパが飢饉に苦しめられた社会だったと分かりますね。
 
 
グリム童話は、当時の西ヨーロッパの時代背景や人々の価値観が垣間見られるので、大人になってもう一度読み返すと子供の頃とは違ったおもしろさを感じると思います。

 
 

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