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こんにちは。
 
今回は、2018年の大河ドラマ「西郷どん」の原作のレビューをお伝えします。ソフトカバー(並製)全3冊の「中巻」の内容です。
 
 
上巻のネタバレレビューは、こちらです。⇒「西郷どん」ワクワク上巻レビュー
 
 
上巻は導入と吉之助(西郷隆盛)が20代までの活躍する前の段階だったので、ちょっと物足りなかったのですが、「中巻」はかなりかなりおもしろかったです。

 
 

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阿部正弘・島津斉彬の急死

 

 
時代は幕末、激動の時代に入ります。
 
 
阿部正弘が39歳という若さで急死し、井伊直弼が大老となりました。島津斉彬たち四賢侯の一橋慶喜を将軍にという思惑は、これで露と消えてしまいます。
 
 
斉彬はこのままでは国が危ういと思い、覚悟を決め兵を上げる準備をしました。でも、その軍の訓練中に倒れて急死してしまったのです。
 
 
斉彬急死の知らせを受けた吉之助は絶望し、自分のやることは終わったと感じます。そして、一刻も早く主君を追って、殉死しようとしたのです。

 
 

ほんのりBLで月照と心中未遂

 

 
殉死しようとした吉之助を思いとどまらせたのが、吉之助の京での活動を支援していた清水寺成就院住職の月照です。
 
 
でも、斉彬の死により、吉之助の周りの環境は一変しました。
 
 
井伊直弼が断行した「安政の大獄」で、水戸の多くの藩士や知識人が粛清され、吉之助と親しかった橋本佐内月照にもその手が伸びてきました。
 
 
吉之助は良かれと思って月照を薩摩に連れていきましたが、幕府の追及を恐れた薩摩藩は、彼らを国外追放します。それは薩摩の外に出たとたん殺されることを意味しました。
 
 
追い詰められた吉之助と月照。こうこうと錦江湾を照らす満月の夜、二人は手をお互いの首にからめ、しっかり抱き合ったまま船先から海に落ちたのでした。
 
 
ここら辺の描写と月照のセリフが、いわゆる「BL風」になっとります。ま、BL要素が入るならここだろうなーという予想どおりの展開でした。そのままドラマ化するなら、どうぞ月光を効果的に使って、幻想的にやってくださいませ。
 
 
月照を演じるのは尾上菊之助さんです。うん、いいと思います。歌舞伎役者でよかったです。
 
 
46歳の「受け」の坊主って、なかなか難しい設定ですよ。配役によってはコメディになっちゃいそうです。がんばっていただきたいです。

 
 

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2度の流刑と愛加那(あいかな)との結婚

 

 
月照とともに入水自殺を企てた吉之助は、その後、引き上げられて奇跡的に息を吹き返します。でも、月照はそのまま亡くなってしまいました。
 
 
自分だけが生き残ってしまったという憤りを抱えたまま、吉之助は奄美大島に流刑になります。
 
 
この奄美大島で、愛加那(あいかな)という女性に出会い、やさぐれていた吉之助の心は癒されていきます。愛加那(あいかな)を島妻に迎え、3年間、穏やかな結婚生活を過ごすことができたのです。
 
 
奄美大島は、もともと琉球に属していて、ヤマト(本土)とは別の神話を持つ南の島です。「黒糖地獄」と呼ばれる薩摩による黒糖の取り立てや、女性が手に刺青(いれずみ)をする理由、奄美の風習などが興味深いです。
 
 
私は沖縄が好きでよく行っていたので、この南国の風習や風土の雰囲気の描写が、まったりしていい感じでした。
 
 
その3年の間に、2人の間に一男一女が生まれます。
その男の子が西郷菊次郎、この物語の語り手なのでした。なかなかうまくできています。
 
 
彼は西郷隆盛の長男ですが、島妻(側室)の子ということで「菊次郎」という名づけられたのです。

 
 

島津久光との確執と2度目の流刑

 

 
大久保一蔵(利通)は、幼馴染の吉之助を気にかけ、薩摩の様子をたびたび手紙にしたためて知らせていました。
 
 
大久保たちの働きかけもあって、薩摩で実権を握った島津久光(斉興と由羅の子)の許しを得、吉之助は帰藩できることになりました。
 
 
せっかく、大久保が働きかけてくれて、みんなに大歓声で迎えられたのに、吉之助は久光がやっぱり大嫌いで態度が悪いです。吉之助から見ると、久光は斉彬とは比べようもない、ぼんくら藩主にしか見えなかったのです。
 
 
そして、とうとう久光の不興を買って、再び島流しになりました。
 
 
今度は、徳之島⇒沖永良部島です。どんどん本土から離れていきますね。
沖永良部島では、始めは吹きさらしの劣悪な環境の狭い牢屋にいれられていました。
 
 
ある暴風雨の日、牢にいては危険ということで、土持政照という間切横目に助けられ、それからは彼の屋敷で過ごせるようになりました。

 
 

再び戻り薩摩藩の中心人物に

 

 
京の町は、物騒な不逞浪士が増えて、会津藩お抱えとなった新選組の姿も目立つようになりました。
 
 
そして、起った「八月十八日の政変」で、会津とともに長州藩を追い払った薩摩の島津久光は、孝明天皇に気に入られ、従四位下という宮中に参内できる官位をもらいました。
 
 
孝明天皇は、とにかく長州が嫌いですねー。
 
 
吉之助の赦免を願おうと、今度は高崎左京(正風)が動きます。久光の機嫌のよいときを見計らって、根気よく説得を続けたのです。
 
 
そして、吉之助は、再び薩摩に帰ることを許されました。
 
 
その後、彼は、大久保の依頼で兵庫(伊丹)を訪れました。そこに、大坂の薩摩屋敷から「京都池田屋にて騒動あり」との火急の知らせが入ったのです。吉之助はそのまま急ぎ、京に向かいました。
 
 
そして、この「池田屋事件」がきっかけとなり、「禁門の変」(蛤御門の変)が起こるのです。薩摩軍を率いたのは吉之助(西郷隆盛)でした。
 
 
新選組が登場しますね~♪
配役は誰だろう??? めっちゃ気になります。
 
 
このとき一橋慶喜が深く考えずに鷹司家に放った火が、京の町を焼きつくしてしまいます。洛中は、「応仁の乱」以来の大火災に見舞われました。御所の公家屋敷を焼くなんて、なんてことするんでしょうね。都のど真ん中ですよ!

 
 

勝海舟・坂本龍馬と出会う

 

 
「禁門の変」で多くの人が焼け出されましたが、京の人たちは、長州藩士に同情的でした。長州の藩士は金払いが良く、まっすぐな気質で男前が多く、都の人たちに好かれていたのです。また、判官贔屓もあったようです。
 
 
「第一次長州征伐」が決行されたころ、吉之助は大坂で勝海舟と面会します。
 
 
勝海舟は、世界に出た経験があるので、視野が広く、吉之助には広い見識のある人物に見えました。その勝から聞かされた「幕府はもうあてにならぬ」「会盟を作って長州もその中にいれろ」という言葉に目からうろこです。
 
 
そうしなければ外国に日本をのっとられる・・・。
 
 
吉之助は、勝海舟の衝撃的な言葉を聞いて以来ずっと興奮し、長州と戦わずにすむ方法を模索していました。
 
 
薩摩藩家老の小松帯刀の口利きで、吉之助は3度目の結婚をします。
それが、黒木華さん演じる「糸」です。
 
 
婚礼を終えると、吉之助は京の小松帯刀の元へ向かいました。
 
 
そこで、彼は、やせた背の高い男になれなれしく呼びかけられます。
その男の名は、坂本龍馬といいました。

 
 

感想

 

 
上巻に比べると、いろんなことが起こって、とってもおもしろかったです。
 
 
特に、島津久光の代になってから、「安政の大獄」「生麦事件」「八月十八日の政変」「池田屋事件」「禁門の変」など、大きな歴史的事変が連発です。
 
 
このめまぐるしさ、幕末ですねー。
 
 
そんな事件がいっぱいのこの時期に、2回も南の島に島送りになってる吉之助って……。
 
 
大久保利通が、まめに連絡してあげて仲良しなのが、なんだか切ないです。(最期を思うと)
 
 
でも斉彬を崇拝している西郷隆盛と違い、大久保利通久光の懐刀といわれるまでになっています。「西郷どん」の中でも、大久保は久光を高評価しています。
 
 
この2人の考え方、生き方の違いが、もうはっきり出てきてるんだなーと思えました。
 
 
西郷隆盛は、お由羅の子・久光は、斉彬には到底及ばないと決めつけています。また、なぜか勝海舟を、すごく高く評価してます。福沢諭吉loveな私は、「そんなすごい人か?」と思いますけどね。
 
 
「咸臨丸」での勝海舟は、ダメダメです。諭吉が怒るのも無理ないですよ。
   ↓
勝海舟を簡単に紹介・「咸臨丸」から西郷隆盛との「無血開城」まで
 
 
ドキュメンタリーでは、西郷隆盛は「誰にでも好かれる徳あるめっちゃスゴイ人」という取り上げ方をされることが多いですが、「西郷どん」では、好き嫌いが激しく、人間味のあるところが描かれています。
 
 
そこが、かえっていいなーと思うのでした。

 

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「西郷どん」の他のネタバレレビューはこちらです。
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