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アンデルセン童話や昔話は、単純なハッピーエンドでは終わらない話が多いです。
今回ご紹介する「マッチ売りの少女」も、そんな話の1つです。結末はバッドエンドのようなそうでもないような解釈しだいという微妙な終わり方をしてます。
「アンデルセン童話」は19世紀のデンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンの創作作品です。
だから、作者がどういう意図でこの話を書いたのか、読者に何を伝えたかったのか、それを自分なりに考えることが大切だと思います。
目次
「マッチ売りの少女」の簡単なあらすじ
■マッチを売る少女
あるとても寒い夜のことでした。
日が沈みあたりはもう真っ暗で、しんしんと雪が降っていました。
そんな寒い夜の道に、1人のみすぼらしい少女が歩いていました。
少女はお母さんのぶかぶかの木ぐつをはいていたので、馬車をよけようとしたときにすっぽりぬけてなくしてしまいました。寒さで足がじんじん痛みます。
少女は一束のマッチを握りしめていました。
かごの中のマッチを売らなければ、家に帰ってもお父さんにぶたれるだけなのです。
でも、1日中売り歩いても、買ってくれる人も1枚の銅貨を恵んでくれる人もいませんでした。
少女は、おなかがぺこぺこでした。
家の窓にはあたたかい明かりがついていて、おいしそうなガチョウの丸焼きの香りがただよってきます。
「そっか、今日はおおみそかなんだ」と少女は思いました。
寒さと歩き疲れたのとで、少女はぐったりと地べたに座りこんで、身をちぢめて丸くなりました。
寒くて寒くてたまりません。でも、少女には、家に帰る勇気はありませんでした。
なぜなら、マッチが1箱も売れていないから。帰っても、お父さんにほっぺをぶたれるにちがいないのです。
■マッチの見せる夢
小さな少女の手は、今にもこごえそうでした。
そのとき、少女はふと思いつきました。
「マッチの火が役に立つかもしれない」
そして、少女はマッチを1本取り出して「シュッ!」とそばの壁でこすりました。
すると、あたたかくて明るくい小さなロウソクのような火がともり、少女の手の中でもえました。
それは、本当にふしぎな火でした。まるで大きな鉄のだるまストーブの前にいるみたいでした、いえ、本当にいたのです。
少女の目の前には、ぴかぴかの金属の足とフタのついだるまストーブがありました。
少女はもっとあたたまろうとストーブのそばによろうとしました。、ところが、そのときマッチの火が消えて、だるまストーブも消えてしまったのです。
少女は次のマッチをすりました。
すると今度は、部屋の中で雪のように真っ白いテーブルクロスのかかったテーブルがあり、その上には豪華な銀食器とガチョウの丸焼きが置いてありました。
不思議な事に、ナイフとフォークがささったままのガチョウの丸焼きが少女のほうによちよち歩いてきました。
と、そのときマッチが消えて、また何もかも消えてしまいました。
少女がもう一度マッチをすると、今度は見たこともないようなきれいな大きいクリスマスツリーが目の前に現れました。
少女が手を伸ばそうとすると、マッチが消えてクリスマスツリーも跡形もなく消え去りました。
少女はもう一度マッチをすりました。
すると、光の中に亡くなったおばあちゃんが立っていました。少女をかわいがってくれたただ1人の人でした。
おばあちゃんは、昔と同じようにおだやかにやさしく笑っていました。
「おばあちゃん、おばあちゃんは消えてしまわないで、わたしを一緒に連れて行って!」
そういうと、少女は持っているマッチの束すべてに火を付けました。
マッチの火は太陽の光のように明るく燃え上がりました。
そうして2人はふわっと浮かび上がり、ずっと遠い所にある光の中へ高く高く舞い上がっていったのでした。
少女はもう寒さも空腹も感じないのです。なぜならそこは神さまのいる所なのですから。
■エピローグ
1月1日、1年のいちばん最初の太陽の光が、1体の小さな亡骸を照らしていました。
そうです。少女は大みそかの夜、寒さのために死んでしまったのです。その小さな手の中には、マッチの束の燃えかすが握りしめられていました。
みんなは、少女が自分の体をあたためるためにマッチをすったのだと思いました。
彼女がおばあさんと一緒に光の中に新年のお祝いをしに行ったことは、だれも知らないのでした。
【感想】アンデルセンの伝えたかったこと!
童話を深読みする書籍やパロディ作品では、よくマッチ売りの少女は幼い売春婦の隠語だったと決めつけるものが多いです。
「花売り娘」と同じ感じですね。
でも、「マッチ売りの少女」は、アンデルセンが自分の母親の貧しかった子供のころの話を聞いて書いた話です。
貧しかった少女時代の母の記憶を参考にして、それをモチーフにして書いたものなのです。
アンデルセンは、少女の職業を勘ぐらせるような下世話な事を伝えたかったのではないでしょう。
おそらく彼は、救いの手が差し伸べられない本当に貧しい人たちは、「天国へ行く」=「死ぬ」ことでしか救われないということを伝えたかったのだと思います。
この世で人を救う力(財力や権力)のある人に、この話を読んで何か感じてほしいと思ったのだと思います。
私はこの話の最後のシーンを読むとき、いつも「フランダースの犬」のラストが浮かんできます。
そのラストは、同じように貧しい境遇の少年が愛犬とともに寒さと飢えで死んでしまいます。
死の瞬間、少年は普段は見る事の出来ない教会のルーベンスの絵を見ることができ(少年は画家になるのが夢)、その絵に感動しながら天使が迎えに来て幸せな気分で愛犬とともに天国に召されるのです。
キリスト教の信者の方はまた違った感想を持つかもしれませんが、そうでない私からすると、死ぬことでしか幸せになれないという境遇は、なんともやりきれないなと思うのでした。
やっぱりアンデルセンの童話は切ない話が多いです。
おすすめ図書
おすすめの関連図書をご紹介します。改めていろんなことに気づいておもしろいですよ~♪
(1)子供向け童話
こちらは1話5分前後で読める量で、お子様への読み聞かせにぴったりです。
簡単なあらすじとはいっても、大人になると忘れている細かい部分が確認できておもしろいです。
【収録15作】
親ゆびひめ・みにくいあひるの子・五つぶのえんどうまめ・はくちょうの王子・空とぶトランク・すずのへいたい・はだかの王さま・天使・にんぎょひめ・まめの上にねたおひめさま・もみの木・火うちばこ・赤いくつ・ひなぎく・マッチ売りの少女
(2)大人向け童話
こちらはアンデルセン童話を簡略化せずに翻訳したものです。「マッチ売りの少女」は2巻に収録されています。
ヨーロッパ文学は日本文学とは雰囲気や教訓が違うので、文化の違いが分かっておもしろいです。
童話というより文学作品、大人向けです。
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