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江戸時代には、代表する2つの文化が花開きました。
でも、学校で日本史を習うとき、文化史はどうしても後回しになりがちですね。
 
 
政治経済優先で文化が後回しというのはちょっと納得いかないのですが、この2つの文化は時期が同じ「江戸時代」なので混乱しやすいです。
 
 
だから、よくニッチなところをテストで突かれたりします。意地悪です。
 
 
「元禄文化」「化政文化」
文化の名前の由来はその時代の「元号」ですよ。
 
 
「元禄」は年号の「元禄」、化政は、年号の「文化」と「文政」を(文を省いて)合体させたものです。
 
 
時代の流れと流行った場所をきちんと押さえると、すっきりしますよ。

 
 

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元禄時代の重要ポイント

 
 

★17世紀後半~18世紀前半
 
★上方(大坂・京都)の文化
 
★町人文化
 
★社会をありのままに表現した
 
★関西限定

 
 

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◆元禄文化の時代

 

 
元禄文化は江戸時代、17世紀後半から18世紀前半にかけて栄えた文化です。
 
 
5代将軍綱吉から8代将軍吉宗の時代までの間ですよ。

 
 

◆元禄文化の担い手は?

 
 
元禄文化の担い手は、大阪や京都、いわゆる上方(かみがた)の町人たちでした。
 
 
江戸時代、大坂は「天下の台所」と呼ばれる経済の中心地で、京都は古くから文化・芸術的の中心でした。
 
 
幕府が関東の江戸で開かれてからも、上方は大いに繁栄し、政治の中心から外れたことで、いっそう町人たち中心に活気づいていったのです。
 
 
でも、そのおもしろさ楽しさが上方の町人独自の感性にうったえたものだったので、元禄文化は上方(関西)の限定的な文化にとどまりました。

 
 

化政文化の重要ポイント

 

★18世紀後半
 
★江戸文化
 
★町人中心
 
★風刺や皮肉を表現した
 
★全国に広まった

 
 

◆化政文化の時代

 

 
化政文化は、18世紀前半の文化・文政期に江戸の町人中心に流行った文化です。
 
 
ときの将軍は、子だくさんの11代将軍徳川家斉でした。

 
 

◆化政文化の担い手は?

 
 
化政文化の中心的な担い手は、江戸の町人たちでした。
 
 
元禄文化からかれこれ100年の後、江戸(関東)はどんどん経済発展が進み全国の物流の中心になっていきました。
 
 
化政文化はそんな時代の江戸で花開いたのです。
 
 
江戸の町の人口が増えると商品が集まり手工業も発展し、近隣の地方でとれる多くの物産が江戸に出荷されるようになりました。
 
 
化政文化の流行った19世紀なると、町に寺子屋ができて町民も学習できるようになり、その動きは農村にも広まっていきました。農村にも貨幣経済が浸透し、貧富の差が開いていったのです。
 
 
農村のゆたかな層は、江戸で流行っている文化芸術(浮世絵など)を楽しみたいと思うようになりました。
 
 
そうして、化政文化は全国的に広がっていったのです。

 
 

◆「100年」の時の変遷を考える

 

 
元禄文化は17世紀後半から18世紀始めの上方で流行り、化政文化は19世紀前半の徳川家斉の時代の江戸で流行りました。
 
 
100年(1世紀)の時代の違いがあります。その間に社会がどう変化していったのかを押さえると、すとんと腑(ふ)に落ちますよ。
 
 
元禄時代は、5代綱吉の時代から8代吉宗の時代です。このころはまだ、江戸幕府を開いてから100年もたっていません。江戸はようやく政治経済の中心として発展していこうとしていました。
 
 
一方、上方(大坂・京都)は古代から日本の中心として栄えていた地方です。
 
 
元禄文化は「天下の台所」大坂と古代からの「文化芸術の中心地」京都を中心に栄えた文化でした。芸術や文化をありのままに表現した作品は、関西の面白みを表し地域限定で盛り上がりました。
 
 
100年後、江戸は11代将軍・徳川家斉の時代を迎えます。
 
 
その頃になると、経済・流通の中心は江戸に定着しました。
 
 
そして、寺子屋が増えたことで町人の識字率がぐんと上がり、地方の農民にもわりと裕福な人たちが登場しました。彼らは大都市「江戸」の最先端文化を積極的に取り入れ、その文化が全国的に広がることになったのです。
 
 
関西と関東、100年の時代の違いがあると考えると、この2つの文化は別物なのだなと納得できます。

 

 

元禄文化と化政文化の代表作品

 
 
それでは最後に、元禄文化と化政文化の文化・芸術の代表作とその作者をまとめておきます。
 
 

◆元禄文化の代表作品


・俳諧(俳句)
松尾芭蕉「奥の細道」
 
 
・浮世草子(小説)
井原西鶴「日本永代蔵」「好色一代男」
 
 
・人形浄瑠璃(文楽)
近松門左衛門「曽根崎心中」「心中天網島」「義経千本桜」「勧進帳」
 
 
・浮世絵(絵画)
菱川師宣「見返り美人図」
(浮世絵の確立者)
 
 
・画家(琳派)
尾形光琳「風神雷神図」「紅白梅図」「燕子花図」「八橋蒔絵螺鈿硯箱」

 
 

◆化政文化の代表作品

 

 
・俳諧(俳句)
小林一茶「おらが春」
与謝蕪村
 
 
・滑稽(小説)
十返舎一九「東海道中膝栗毛」
式亭三馬「浮世風呂」
 
 
・読本(小説)
滝沢馬琴「南総里見八犬伝」
 
 
・浮世絵
北川歌麿「美人画」
葛飾北斎「富嶽三十六景」
歌川広重「東海道五十三次」
 
 
化政文化の時代には、新しい学問も登場しました。
 
 
・蘭学
杉田玄白「解体新書」
・国学
本居宣長「古事記伝」
・地図
伊能忠敬「日本地図」

 
 

おわりに

 

 
化政文化は1800年以降に栄えた江戸の町人中心の文化でしたね。
 
 
ということは、それから約50年後には、ペリーの黒船がやって来るんですよ!
 
 
もう幕末はすぐそこという時代なのです。

 
 

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