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今日はアンデルセン童話の「ナイチンゲール」をご紹介します。
 
 
この物語は、昔の翻訳本では「小夜啼鳥」(さよなきどり」と紹介されています。
 
 
ヨーロッパのアンデルセンが中国を舞台にして書いた作品というところがおもしろいですね。
 
 
中国の皇帝と美しい歌声の鳥「小夜啼鳥(さよなきどり)」のお話です。
 
 
「小夜啼鳥(さよなきどり)」のほうが、響きも文字も美しくないですか?
 
 
ナイチンゲールというとあの伝説の看護師さんのイメージが……。
 
 
当時、ヨーロッパでは「シノワズリ」(中国趣味の美術様式)がブームになっていたので、その影響を受けて書いたと思われます。
 
 
ちなみに、「小夜啼鳥」はスズメ目ヒタキ科に属する実在する鳥です。「西洋のウグイス」と言われる歌声の美しい鳥で、英名は「ナイチンゲール」です。

 
 

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「ナイチンゲール」の登場人物


ナイチンゲールの主な登場人物は、中国の皇帝とナイチンゲールです。
 
 
ナイチンゲールは言葉を話す鳥なので、2人の会話を中心に物語が展開していきます。

 
 

「ナイチンゲール」の簡単なあらすじ

 

■皇帝の庭の美しい歌声の小鳥

 

 
むかしむかし、中国(シナ)の皇帝の御殿には広い庭と森があり、そこに1羽のナイチンゲールが住んでいました。
 
 
ナイチンゲールの歌声はとても美しく、日々の生活に追われる貧しい猟師ですら、つい立ち止まって聞きほれるほどでした。
 
 
いろんな国から訪れる旅行者もその美しさにうっとりし、国に戻るとナイチンゲールをほめたたえるたくさんの本や詩を作りました。
 
 
ある日、皇帝は書物を読んでナイチンゲールの事を知り、侍従長(じじゅうちょう)こう言いました。
 
 
「この帝国のこの庭にそのような美しい鳴き声の鳥が住んでいるとは。どんな歌声か聞いてみたいものだ。連れて来い。」
 
 
侍従長は御殿で働くいろんな人に聞いて、なんとかナイチンゲールを見つけることができました。
 
 
帝国の第一等のもの、それは、小さな1羽の灰色の鳥でした。
 
 
侍従長は、帝国一の鳥がこんな見栄えのしないちっぽけな鳥だったので、おどろきました。

 
 

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■ナイチンゲールの世にも美しい歌声

 

【Wikipediaより↑ナイチンゲールの画像お借りしました】

 
でも、小さな灰色の鳥がいったん歌いだすと、侍従長は「まるで玻璃鍾(はりしょう)の音だな」と感心しました。
 
 
そして、ナイチンゲールは皇帝の御前に招待され、この世とは思えないほどの美しい声で歌いました。
 
 
その歌声を聞くと、皇帝の目には涙があふれ、それがほおを伝わって流れ落ちました。
 
 
皇帝は、ナイチンゲールにごほうびとして「金のうわぐつ」をあげようと言いましたが、ナイチンゲールは「ごほうびはもういただきました。皇帝の涙が何よりのごほうびです」と言いました。
 

 

■宝石で作られた細工物の鳥

 

 
ある日、皇帝のもとに荷物が届けられました。それは日本国からの贈り物で「ナイチンゲール」と書かれています。
 
 
皇帝はまたしてもナイチンゲールをほめたたえた書物かと思いましたが、中を開けてみるとちがっていて、それは宝石がちりばめられた美しい細工物の鳥でした。
 
 
その美しい細工物の鳥は、ナイチンゲールそっくりの歌声で歌ったのです。皇帝はこの細工物の鳥を、たいそう気に入りました。
 
 
そして、ナイチンゲールと一緒に歌わせましたが、ナイチンゲールが自分の気の向くまま歌うのに対し、細工物の鳥はワルツのリズムで歌うので、うまく合いません。
 
 
音楽長は、「ナイチンゲールは、次にどんな歌が飛び出すかわかりません。でも、細工物の鳥ははっきりわかりますしリズムも正確です。そして、中を開いてその仕組みを知ることだってできます。」と細工物の鳥のほうをほめました。
 
 
細工物の鳥は33回歌い続けても疲れることがなく、キラキラと宝石が輝いて本物のナイチンゲールよりずっと美しい鳥でした。
 
 
そうして、みんな細工物の鳥の歌声ばかりを聞くようになりました。
 
 
皇帝が本物のナイチンゲールにも歌わせようというと、ナイチンゲールの姿はなくなっていました。だれに知られることもなく森に帰っていったのです。
 
 
みんなは「なんて恩知らずな鳥なんだ!」とナイチンゲールを悪く言いました。
 
 
それから1年ほどの間、皇帝は細工物の鳥の声を毎日聞いていましたが、急に細工物の鳥のお腹のあたりがプスッと鳴って、音楽が止まってしまいました。
 
 
すぐに時計屋を呼んで修理させましたが、軸がすり減っているのでこれからは1年に数回しか歌わせられなくなりました。

 

 

■病に倒れた皇帝

 

 
それから5年後、皇帝が病気になりもう長くはないだろうと思われたのです。
 
 
皇帝はまだご存命なのに、宮中の役人たちは皇帝がもうおかくれになるだろうと思って、新しい皇帝にお祝いの言葉を言いに行きました。
 
 
青ざめたお顔でベッドに横たわる皇帝の胸の上に、死神がやって来ました。
 
 
死神は皇帝の金のかんむりかぶり、手には皇帝の剣と美しい旗を持っています。
 
 
皇帝はたまらなくなって、「音楽をやってくれ! 音楽だ!」と叫びますが、細工物の鳥にねじを巻くものはいません。
 
 
そのとき、急に窓のところからこの上もない美しい歌声が聞こえてきました。

 
 

■ナイチンゲールの歌声再び

 

 
その美しい歌声の主は、あの灰色の小鳥・ナイチンゲールでした。
 
 
ナイチンゲールが窓辺の枝にとまり、歌っていたのです。
 
 
ナイチンゲールは、皇帝のお見舞いにやってきたのでした。
 
 
すると、死神もその歌に聞きほれて「もっと歌ってくれ」と言いました。
 
 
ナイチンゲールは、歌うたびに死神に「その金のかんむりをください」「金の剣をください」「金の旗をください」といいした。
 
 
そうして死神は3つの皇帝の宝をナイチンゲールに渡し、ついに窓からでていきました。
 
 
皇帝は「ありがとう。ありがとう。天国の小鳥よ、私はお前にどんなほうびを取らせたらよいだろう。」と言いました。
 
 
ナイチンゲールは「ごほうびは、もういただきました。皇帝は私の歌を初めてきいたとき、涙を流してくださいました。その涙こそが歌をうたうものにとっての宝石です」とこたえました。
 
 
そして、ナイチンゲールはまた歌いはじめ、皇帝はぐっすりとお休みになりました。
 
 
皇帝はまた元気になって目覚められました。
 
 
お付きの人は誰もいませんでしたが、ナイチンゲールはまだ皇帝のそばで歌っていました。
 
 
皇帝は、ナイチンゲールに「いつもそばにいてほしい」と言いました。
 
 
でも、ナイチンゲールは「私は好きなときにここに来て歌います」とこたえました。
 
 
ナイチンゲールが飛び去った後、家臣たちが皇帝のお部屋へ入ってきました。
 
 
家臣たちはもう皇帝がお亡くなりになったと思って見にきたのですが、皇帝は元気に立ち上がっていいました。
 
 
「みなの者、おはよう。」

 
 

鳥の目=「俯瞰的に見る」ということ

 

 
アンデルセン童話には、動物がよく登場しますが、中でも鳥は特別な役割を担っていることが多いです。
 
 
「おやゆび姫」「白鳥の王子」「みにくいあひるの子」そして、「ナイチンゲール」などなど……
 
 
鳥は空高く舞い上がり、地上を見下ろすことができます。つまり、世界を俯瞰しているということなのでしょう。
 
 
だから、ナイチンゲールは皇帝でさえ見えなかったことが見えたのでしょうね。

 
 

おすすめ図書

 
 
アンデルセン童話「裸の王様」のおすすめ図書を2冊ご紹介します。
 

こちらは子供用のおすすめ作品です。1話5分前後で読める量で、お子様への読み聞かせにぴったりです。
 
 
簡単なあらすじとはいっても、大人になると忘れている細かい部分が確認できておもしろいですよ。

 
【目次】(「BOOK」データベースより)
1章 美しい心をはぐくむお話(にんぎょひめ/ちがいがあります/マッチ売りの少女/いたずらっこ/月が見ている話ー第二夜/コウノトリ/イーダちゃんのお花/天使/ペンとインクつぼ/月が見ている話ー第十四夜/ろうそく/ツックぼうや/月が見ている話ー第三十三夜)/2章 苦しみや悲しみを乗りこえる力を育てるお話(雪の女王/おやゆびひめ/みにくいアヒルの子/パンをふんだむすめ/年の話/銀貨/旅の仲間/ティーポット/白鳥の王子/青銅のイノシシ/幸福の長ぐつ/古い街灯)/3章 運命のふしぎを楽しむお話(はだかの王さま/すずの兵隊/ヒナギク/まったく、本当です!/郵便馬車で来た十二人/空飛ぶトランク/五つぶのエンドウマメ/びんの首/最後の真珠/ヒツジかいむすめとえんとつそうじ屋/火打ち箱/イブと小さいクリスティーネ/雪だるま)/4章 本当に大事なものに気づく力を養うお話(ナイチンゲール/赤いくつ/ブタかい王子/食べ物屋さんにすむこびと/子どものおしゃべり/古い家/高とび選手/エンドウマメの上にねたおひめさま/モミの木/走りくらべ/とうさんのすることはまちがいない/月が見ている話ー第三十一夜)
 
 

こちらはアンデルセン童話を簡略化せずに翻訳したものです。本格的なアンデルセン童話の翻訳本で、少し古臭い言い回しがありますが、そこがまた味があっておもしろいですよ。
 
 
「ナイチンゲール」は2巻に収録されています。
 
 
ヨーロッパ文学は日本文学とは雰囲気や教訓が違うので、文化の違いが分かっておもしろいです。
 
 
童話というより文学作品、大人向けです。

 
 
その他の作品はこちらをどうぞ。
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