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こんにちは。
 
 
最近、薩摩の教育制度「郷中教育」が、よく話題にあがっているようです。
 
 
大人が子供を教育するのではなく、20代までの武家の男子の中で、年長者が年少者を生活全般を含めて指導するという教育システムだったことから、縦割り教育を推奨する人に、ほめたたえられがちです。
 
 
でも、どんなものにも人にも、必ず悪い点はありますね。
 
 
今回は、そんな郷中教育の欠点について、私が思っていることをお伝えします。

 
 

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西郷隆盛が習った「郷中教育」の欠点

 

 
「郷中教育」がどのようなものだったかは、こちらを参考にどうぞ。
     ↓


 
この教育法は、現代社会で取り入れると、問題点が多いと私は思います。
 
 

身内には愛情深く、敵には容赦ない

 

 
「郷中教育」は、もともと戦国時代の教育でした。戦乱の世を想定して、薩摩を守る強い戦士を作るための教育法だったのです。
 
 
「西郷どん」1話では、郷中で順位を競わせて山登りをさせるシーンが出てきました。勝つことがすべてという考え方です。ですから、自分のチームが1位になるためには手段を選ばず、他の郷中を蹴落とそうとする気持ちが生まれてしまうのです。
 
 
味方は命をかけてでも守り、敵には容赦しない、これは、戦士として戦い、国を守るためには、とても大事なことでした。
 
 
西郷隆盛は、会えばだれもが好きになる情深い人だったといわれることがあります。
彼は、確かにそうだったのかもしれませんが、そこが彼の長所であり短所だったのではないかと思います。
 
 
情深い人は、身内や味方をとても強く愛しますが、反対に嫌いな人を強く憎む傾向があると思うのです。
 
 
よく言うじゃないですか。
「愛情」の反対は「憎悪」ではなく「無関心」だと・・・
 
 
情深い人は人を深く愛する反面、憎む心も強いです。愛憎は、同じ大きな感情の裏表なのです。
 
 
私は、あまり他人に関心がないので、よくわかりますよ。めちゃくちゃ好きな人はほとんどいないけど、見たくもないほど嫌いな人もいないのです。
 
 
西郷隆盛は、島津斉彬を唯一無二の素晴らしい主君だと思い込んでいました。斉彬が亡くなったとき、本気で後を追おう(殉死)としたほどです。
 
 
斉彬を心底敬愛していたのが、よくわかります。
 
 
でも、それゆえ、斉彬の次に実権を握った義母弟の久光を、無能と決めつけて無礼な態度を取り続けます。
 
 
藩主(の父)に向かって「地ゴロ(田舎者)」と失礼な言葉を言ったのは有名ですが、問題は、斉彬と比べて言ったというところでしょう。江戸育ちで欧州文化にも通じていた斉彬に比べて、おまえは薩摩から出たことのない田舎者だと、決めつけてます。
 
 
もちろん、久光にもその西郷の気持ちは筒抜けだったでしょう。腹が立つのも当然です。その点、もう少し頭が冷えていた大久保利通のほうが、私は好ましいと思えるのです。

 

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「同調圧力」が非常に強い

 

 
「郷中教育」は、地域ごとに子供を集めて、子供同士で教育し合っていました。ですから、自然に家族ぐるみの付き合いとなり、身内びいきがめちゃくちゃ強くなります。
 
 
そういう社会は、同調圧力がとても強くなります。みんなと一緒に何かに取り組むのが苦手な人、協調性のない人にとって、とても息苦しく感じるでしょう。
 
 
でも、これも戦国時代の戦士を作る教育、軍隊教育としては、正しかったのだろうと思います。

 

 

武士以外の領民・女性に教育の機会を与えないシステム

 

 
薩摩藩は、住民の四分の一から三分の一が武士階級でした。これは、かなり多い割合です。この大勢の武士階級が、領民から税を取り立て、領民は貧困にあえいでいました。
 
 
そして、「郷中教育」を受けられるのは、武士の男子のみでした。(薩摩藩には寺子屋がほどんどなかった)
 
 
つまり、多数の武士を養う農民に教育の機会を与えず、田畑を耕させ続けたのです。農奴のような扱いですね。
 
 
そして、これはよく知られていることですが、女性は「郷中教育」を受けることはできないという決まりがありました。女性の教育の機会が、ずっと奪われ続けていたのです。

 
 

おわりに


「郷中教育」は、詮議というディベート形式の教育法と武術が中心だったので、幕末のような危機的状況下では長所を生かせたでしょう。
 
 
でも、現代社会で考えると、仮想敵を想定して考えさせる教育は危険だと思います。
 
 
どんなものにも欠点はあります。理想はそれをよく理解して、良い所を取り入れることなのでしょう。
 
 
私は、近所づきあいが濃いのはまっぴらごめんなので、こういう田舎暮らしはできませんけど……ね。

 
 

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