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ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』は、原作があの有名な『グリム童話』のお話です。
 
 
『グリム童話』は19世紀初頭に、ドイツのグリム兄弟が西ヨーロッパに伝わっていた民話・伝承を集めたものでした。
 
 
今回は、その原作の『グリム童話』のほうの「ラプンツェル」のあらすじと教訓についてお伝えします。

 
 

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「ラプンツェル」のあらすじ


 
グリム兄弟が集めた童話集『グリム童話』は空前の大ヒット作となり、多くの親が子供に読み聞かせるようになりました。
 
 
ところが、昔から伝わる民話や伝承には残酷なシーンや性描写が多くあったので、子供に読み聞かせるのにふさわしくないというクレームがよせられるようになったのです。
 
 
それを受けて『グリム童話』は、版を重ねるごとに、子供向けのやわらかいお話に少しずつ変えられていきました。
 
 
「ラプンツェル」の場合、今回紹介する初版は「ラプンツェルの妊娠が発覚して追い出され双子を出産した」という内容ですが、後に「王子と逢引きしていたのを見つかって追い出された」と変えられました。妊娠するようなことは書いてはダメってことのようです。
 
 
それでは、原作の簡単なあらすじをお伝えします。

◆魔女の庭の野菜


 
むかしむかし、子供がほしいと願いながらなかなか授からない夫婦がいました。
 
 
ある日、ようやく妻が身ごもり夫婦は大喜びしました。
 
 
身重の妻がふと隣の家の庭を見ると、立派な庭に美味しそうな野菜の苗がたくさん植えてありました。
 
 
妻はなぜかその野菜が食べたくて食べたくてしかたがありません。食が細くなった妻が「どうしてもあの野菜が食べたい」というので、夫は高い塀を乗り越えて隣の野菜をこっそり盗んで妻に食べさせました。
 
 
その野菜のあまりの美味しさに感激した妻は、次の日には「もっと食べたい、あの野菜が食べられなければ死んでしまうわ」とまで言うのでした。
 
 
仕方なく妻のために夫は再び隣の野菜を盗みに行きました。
 
 
「そこで何をしているんだい!」
 
 
とうとう夫は隣人に見つかってしまいました。隣に住んでいたのは、恐ろしい「魔女」のおばあさん(初版は「妖精」)だったのです。
 
 
恐怖におびえながら、夫が必死になって事情を説明すると、
 
 
「それならすきなだけもっておいき、その代わり、生まれた子供を私にわたすんだよ。」
 
 
恐ろしさのあまり、夫は生まれる赤ちゃんを魔女にわたすという約束を交わしてしまいました。こうして生まれた赤ちゃんは、魔女に取り上げられてしまいました。

 
 

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◆塔の上に閉じ込められる


 
夫婦の子供はラプンツェルと名付けられました。彼女は魔女のもとですくすく育ち、金髪の美しい娘に成長しました。
 
 
ラプンツェルが12歳になったとき、魔女は彼女を森の中の高い「塔の上」に閉じ込めてしまいました。
 
 
その塔には入口はなく、上にのぼる階段もありません。誰も彼女に会いに行くことはできませんでした。
 
 
魔女が「ラプンツェルや」と下から呼ぶと、ラプンツェルは長く伸ばした見事な金髪を窓からたらしました。魔女はそれをつたっていつもラプンツェルの部屋へあがっていたのです。

 
 

◆王子と恋に落ちる


 
それから何年かたったある日、この国の王子が森を通りかかりました。すると、どこからかたいへん美しい歌声が聞こえてきます。
 
 
「あの美しい歌声の主は誰だろう」
 
 
そう思った王子は、塔の上にいる金髪の美しい娘を見つけました。
 
 
王子は彼女の歌声のとりこになってしまい、何度も塔の下まで来ましたが、塔にのぼる入口が見つからないので彼女に会うことができません。
 
 
そして、王子は魔女がやってきて、いつものようにラプンツェルのたらした長い金髪をつたって部屋へあがるのを目撃しました。
 
 
塔への上り方がわかった王子は、魔女のように「ラプンツェルや」と塔の下から彼女に呼びかけました。そして、彼女のたらした金髪をつたって部屋にあがったのです。
 
 
王子はラプンツェルの美しさに見とれ、すぐに求婚しました。はじめてみる男性の姿にラプンツェルは驚きましたが、すぐに彼女も素敵な王子に恋をしました。
 
 
そして、王子はそれからたびたび夜になるとラプンツェルの髪をつたって部屋にあがり、2人は逢瀬を重ねました。

 
 

◆荒れ野に追い払われる


 
魔女がラプンツェルに会いに来るのは昼間だったので、彼女が何度も夜に王子と会っていることを、魔女は気づきませんでした。
 
 
ところがある日、ラプンツェルは、「お腹が太ってしまってお洋服がきついわ」と魔女に言いました。
 
 
ラプンツェルのお腹がふくらんでいるのに魔女が気づきました。そして、ラプンツェルは、王子と毎晩のように会っていたことがばれてしまったのです。
 
 
魔女は激怒し、ラプンツェルの美しい金髪をバッサリ切り落として、荒れ野に追い払ってしまいました。
 
 
そんなことがあったとは知らない王子が、いつものようにラプンツェルに会いに来ました。
 
 
魔女は切り落としたラプンツェルの髪を窓に引っかけて塔の上からたらし、王子がのぼってくるのを待ちました。
 
 
そして上ってきた王子は、魔女の姿を見てびっくり仰天!
 
 
「お前はもう二度とラプンツェルと会うことができないよ!」
 
 
事情を聞いた王子は、ラプンツェルを失ったと絶望し、塔の上から身を投げました。
 
 
王子は真っ逆さまに下に落ちました。彼はしげみに落ちて命はとりとめましたが、いばらで両目を傷つけて目が見えなくなってしまいました。

 
 

◆王子との再会


 
目の見えなくなった王子は、悲しみ泣きながらラプンツェルを探してあちらこちらさまよい続けました。
 
 
何年も何年も荒れ野をさまよっていた王子は、ある日懐かしい美しい歌声を耳にします。
 
 
「あれは、ラプンツェルの声だ!まちがいない!」
 
 
王子は見えない目で必死に、歌声をたよりに歩いていきました。
 
 
そして、ようやく愛しいラプンツェルと再会できたのです。ラプンツェルは王子との間に生まれた双子を育てながら、なんとか生きていました。
 
 
2人は涙をこぼして喜び抱き合いました。
 
 
ラプンツェルの涙が王子の目をぬらすと、王子の目からいばらのトゲが抜けて、もとどおり目が見えるようになりました。
 
 
そうして、王子はラプンツェルと双子の子供たちを連れてお城に帰り、幸せに暮らしました。

 
 

ラプンツェルの教訓


 
のお話の教訓は、人を束縛することは意味のないこと、無理強いするとかえって逃げられるということです。
 
 
人は強く束縛されると、窮屈になって逆にその人から離れたくなっていきます。
 
 
このお話では、魔女は入口のない誰も入ることのできない塔の上に、ラプンツェルをかくしてしまいます。
 
 
そして、自分以外の誰とも会えないように、社会との関わりを持たさないようにしてしまいました。
 
 
でも、おそらく魔女はラプンツェルのことを大切に思って育てたのでしょう。
 
 
「ラプンツェル」という名前は、彼女がお腹の中にいるとき母が食べたくて仕方がなかった魔女の庭の「野菜」の名前です。
 
 
その野菜は「レタス」。魔女の庭はレタス畑だったのですね。
 
 
魔女は大切に育てていた野菜(ラプンツェル)と同じように、娘を大事に育てたのです。
 
 
でも、それはラプンツェルを「物」のように独占するひとりよがりな望みであり、ラプンツェルの気持ちをないがしろにしたものでした。
 
 
自分のことだけを見ていてほしかった。だから、ラプンツェルが王子に心を奪われたとき、激怒したのでしょう。
 
 
でも、人は束縛されると逃げたくなる、ダメと言われるとやりたくなる性質をもっています。
 
 
魔女は自分の手でラプンツェルを追い出し、また独りぼっちになってしまいました。
 
 
彼女の姿は、子供を束縛し成長しても自分の思い通りにしようとする毒親と重なってしまいます。
 
 
本当に子どもを大切にするというのがどういうことなのか、考えさせられるお話でした。

 
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