この記事を読むのに必要な時間は約 14 分です。


 
こんにちは。
 
 
西郷隆盛のテレビ番組での性格設定は、優しくてたいへん情のある素晴らしい人というのが多いですね。
 
 
まったく「洗脳か?」と思えるほどです。特に「西郷どん」は、脚本が嫌い・・・。(役者はがんばってると思います)
 
 
西郷隆盛は、確かにとても「状の深い人」だったでしょう。だからこそ公私を切り離せず、嫌いな人や意見の合わない人に、かなりひどい言動を繰り返しています。
 
 
そして、女性に対しては、当時の薩摩隼人らしさを持ち、対等の存在とは考えていなかったと思われます。
 
 
私の父は鹿児島の片田舎(南端)出身なのですが、戦後生まれなのに関西の男性とはまったく違います。
 
 
それはもう、DNAレベルで男尊女卑の刷り込みがあるのかと思えるほどなのです。
 
 
薩摩は武士中心の国で庶民(商人)中心の大阪とは、男女や家の在り方、考え方が根本的に違うのです。
 
 
西郷隆盛も、実際の「行動」に着目すると、妻の身の上などたいして気にしていませんね。かなり典型的な薩摩隼人だったのでしょう。
 
 
ちなみに、薩摩隼人でも西郷の従弟・大山巌など例外もいます。大山巌は外国かぶれの進歩的な考え方の男性で、それは妻・山川捨松とのおしどり夫婦ぶりを知ればわかるのです。
 
 
今回は、西郷隆盛の3人の妻の生き様をお伝えします。

 
 

スポンサーリンク

最初から最後まで適当にあしらわれた1人目の妻・須賀

 

 
西郷隆盛には、3人の妻がいました。
 
 
1人目は須賀、2人目は愛加那、3人目は糸(糸子)という女性です。
 
 
西郷隆盛は、まずはじめ1852年に両親にすすめられて、伊集院家の須賀という女性と結婚しました。親同士が話をすすめたので、結婚式の日までお互い顔も知らなかったそうです。
 
 
一説によると、伊集院家は西郷家より家格が上でしたが、須賀の顔にはあばた(天然痘の跡)が残っていたため、西郷家と縁組をしたともいわれます。
 
 
須賀が嫁いできた西郷家は、子沢山の貧乏所帯でした。
 
 
その上、結婚した年に祖父・父・母が数か月置きで次々と病死してしまったのです。西郷隆盛は、父の死を受けて26歳で西郷家の家督を継ぐことになりました。
 
 
7人兄弟に祖母までいた西郷家は、生活がたいへん厳しく、その日の食事にも事欠くありさまでした。
 
 
それなのに、稼ぎ頭であるはずの長男・西郷隆盛は、家族に旅費を借金させて一人江戸に行ってしまい、薩摩藩のために働いたのです。
 
 
本人は自分のしたい仕事がやれて充実していたでしょうけど、残された嫁の須賀や次男の吉二郎たちは大変でした。
 
 
結局、彼らは先祖代々の家や田畑を売り払って、郊外で借家暮らしをすることになったのです。
 
 
江戸に行ってしまったため、もちろん妻の須賀はほったらかし、極貧の西郷家の家政婦状態でした。
 
 
そして、栄養失調のため脚気になってしまい、歩くのもたいへんな状態になってしまったのです。娘の苦労を見かねた須賀の親が娘を引き取りに来て、1854年11月に2人は離婚したのです。
 
 
須賀については史料が乏しいので、詳しいことは分からないのですが、大河ドラマの「西郷どん」ではしっかり美談としてまとめられていましたね。林真理子の原作はそうでもありませんよ。脚本家の意図でしょう。
 
 
この1人目の妻と3人目の妻は、西郷隆盛の妻ではなく「西郷家の嫁」として扱われていたというのがよくわかります。
 
 
「嫁は家に仕えるもの」という薩摩の人らしい考え方です。
 
 
でも、2人目の妻だけはちょっと違うようですよ。

 

 

奄美の「島妻」愛加那とは核家族的な生活だった

 

 
西郷隆盛が奄美大島へ送られたとき、2番目の妻と出会います。その女性は、島の有力者の血筋の娘・愛加那でした。
 
 
当時の西郷隆盛は、主君・島津斉彬が急死して井伊直弼による「安政の大獄」が始まり、味方がどんどん粛清されていく不遇の時期でした。
 
 
彼がかくまった尊皇派の僧侶・月照をかくまうことができず、絶望して月照と共に夜の錦江湾(きんこうわん)に船の上から身を投げ入水自殺を図ったのです。
 
 
ところが、引き上げられたところ、西郷隆盛だけが一命を取りとめたのです。
 
 
そのとき西郷隆盛の処遇に困った薩摩藩は、幕府の目をくらませるために死亡届を出して、そのまま奄美大島に潜伏せよと彼に命じました。
 
 
そういう経緯で、西郷隆盛は「菊池源吾」という偽名で奄美大島で暮らしたのでした。
 
 
西郷は始めはすさんだ生活をしていたそうですが、しだいに島の人々ともなじみ、妻をめとったらどうかという話が持ち上がりました。
 
 
そうして、1859年11月、島で知り合った「とぅま」という娘と結婚したのです。
 
 
「とぅま」は「愛加那(あいかな)」と名前を変えて、西郷隆盛の島妻(あんご)になりました
 
 
当時、薩摩藩では、南の島々の女性を妻を迎えることは許すけれど、その島から薩摩に戻るときは妻は置いていかなければならないという決まりがありました。
 
 
島から出る事ができない妻は、「島妻(あんご)」と呼ばれます。島妻との間に生まれた子どもは、薩摩(本土)に連れて帰ることができました。
 
 
西郷隆盛と愛加那はとっても仲が良かったそうです。
 
 
「薩亭主関白な薩摩隼人はどこへ行った?」というほど、現代の核家族の夫婦のような寄り添いっぷりだったそうです。
 
 
それはきっと、愛加那が「西郷家の嫁」ではなく「菊池源吾の妻」だったからでしょう。2人は菊次郎と菊草(菊子)という2人の子どもに恵まれました。
 
 
西郷隆盛にとって、初めての自分の子どもです。
 
 
2人のラブラブ結婚生活は約3年間続きましたが、やがて「桜田門外の変」で井伊直弼が暗殺されると、幕政が変化していきます。
 
 
薩摩でもその3年の間にいろいろなことが起こり、人材不足もあって再び西郷の力が必要と思われるようになっていました。
 
 
そして1861年、大久保利通らの島津久光への働きかけもあって、ついに西郷隆盛に薩摩藩に戻るようにとの命が下されたのです。
 
 
その当時、2人目の子ども菊草(菊子)は、まだ愛加那のお腹の中にいました。ですから、西郷隆盛は娘の顔を見ることなく鹿児島に帰ったのです。
 
 
その後、再び西郷隆盛は今度は薩摩の国父・島津久光の不興を買い、流刑に処せられました。
 
 
そのとき一時的に送られた徳之島は奄美大島から近かったのです。愛加那はチャンスと思い、幼い息子・菊次郎と生まれたばかりの娘・菊草を連れて、船で西郷隆盛に会いに行きました。
 
 
でも、その数日後、西郷隆盛はさらに遠くの沖永良部島へ移送されることになり、家族は再び別れることになったのです。
 
 
このときの愛加那の行動力、素晴らしいですね。

     ↓


 
 
 

スポンサーリンク

西郷家は私におまかせの「西郷家の嫁」糸子

 

 
大河ドラマ「西郷どん」では、なぜか子供時代から男子に混ざって一緒にいたお転婆少女「糸」。
 
 
郷中教育(学問は男子のみ!)のあった薩摩では考えられない脚本がうっとおしかったのですが、その後も、ちょろちょろ出てきて「一体なんなの?」という言いかくなったのが、黒木華さん演じる糸でした。(黒木華さんは好きです。ドラマの脚本が嫌い。)
 
 
実際の糸のエピソードでよく知られているのは、平和な時代になり上野に西郷隆盛の銅像が建てられたとき、夫の銅像を見て「うちの人じゃなか」と言い放ったことですね。
 
 
糸は、1865年に西郷隆盛が39歳のとき結婚しました。
 
 
お互い再婚でした。
 
 
薩摩藩の家老・小松帯刀が、西郷隆盛にそろそろ再婚してはどうかとすすめ、薩摩藩士の岩山八郎太の娘・糸を紹介したのでした。
 
 
家老がそうおっしゃるならと、西郷隆盛はまた本人確認をほとんどせずに再婚相手を決めています。
 
 
西郷と糸との間には、寅太郎・午次郎・酉三(ゆうぞう)という3人の男子が生まれました。
 
 
それぞれ生まれた年の「干支(えと)」をとって名付けたのだそうですよ。子どもの名前の付け方が、超テキトーでおもしろいです。
 
 
結婚した翌年が「薩長同盟」の結ばれた年なので、西郷隆盛が薩摩にじっと留まっていなかったのは明白ですね。
 
 
糸は完全に「西郷家の嫁」でした。
 
 
家を守って3人の子どもを育て、その上「西郷隆盛の子」である愛加那との間の2人の子供も引き取って育てたのです。
 
 
愛加那の息子・菊次郎は、西郷隆盛の長男なのに島妻の子だから「菊太郎」ではなく「菊次郎」と名付けられた子でした。
 
 
薩摩の人の南の島の人々への差別意識が、はっきり表れています。
 
 
でも、菊次郎は西郷隆盛の「長男」として西南戦争に参加したんですよ。
 
 
そうして、戦場で片足を失いながらも生還し、後に台湾総督府で外交官として働き、京都市長に就任しました。菊次郎は優秀な外交官・政治家に成長したのです。
 
 
また、長女の菊草(菊子)は、西郷隆盛の従弟・大山巌の弟の大山誠之助と結婚しました。
 
 
菊草は4人の子どもにめぐまれましたが、夫の誠之助はその兄の巌と異なり、借金を作るDV夫だったため、菊草は苦労の多い人生だったそうです。
 
 
ともかく、忙しい夫に代わって家をしっかり守り子どもたちを育て上げた糸は、薩摩の武家にふさわしい肝っ玉かあさんだったといえるでしょう。
 
 
西郷糸(糸子)については、こちらでもっとくわしくお伝えしています。
     ↓


 

【関連記事】
   ↓


 

 

 

スポンサーリンク